中東かわら版

№16 イラン・アメリカ:アメリカがイラン核合意からの離脱を表明

 5月8日、トランプ大統領は核合意からの離脱を表明した。発表の要旨は以下の通りである。

・イランに対し最高レベルの経済制裁を科す。

・イランの核兵器獲得を支援する国に対し制裁を科す。

・同盟国とイランの核の脅威に対する解決策(弾道ミサイルの脅威の除去、世界的なテロ活動の停止、中東域内での示威行為の防止を含む)に取り組んでいく。

・イラン側が新規に交渉を求める際には準備があり、交渉を進めたい。

 

 またイランへの経済制裁に関して、アメリカ財務省は民間航空会社ボーイングとエアバスのイラン向け輸出免許を停止する方針だと発表した。

 上記の発表に対してロウハーニー大統領は、核合意はイランとアメリカ以外の5カ国との合意になったとし、核合意を交わした5カ国(イギリス、フランス、ドイツ、中国、ロシア)との対応について協議していくと発表した。また、イラン人民の利益が達成されるのであれば、核合意に残るが、この枠組みで利益が得られないと判断した場合、人民に対して本件に関する新たな措置について説明すると表明した。また数週間以内に5カ国と協議を行うよう外務省に指示を出したと述べた

 他方、核合意の締結国であるイギリス、フランス、ドイツは核合意に留まると発表した。また中国は、核合意は正当かつ必要な取引であり地域の安定を守るために必要だとし、この枠組みで約束事を履行すると発表している。また、ロシアはアメリカの離脱に失望したと表明した。国連は、アメリカの決定に対し深く憂慮するとし、核合意の当事者に対しその順守を求めた。

 中東諸国の中で、現時点でアメリカの決定を支持したのはイスラエル、サウジアラビア、UAE、バハレーンである。イスラエルはアメリカの勇気ある決断を完全に支持するとし、イラン核合意は域内と世界の平和にとって悲劇であると表明した。湾岸諸国は、概ね、アメリカの核合意離脱を支持する一方で、イランがテロ組織の支援、中東諸国の政治に対する内政干渉を通じて域内の安定を損ねていると指摘し、イランの脅威という自国の関心と絡めた反応を見せている。

 他方、シリアがアメリカの決定を激しく批判するとともに、イランとの完全なる連帯を表明した。さらに、イランがアメリカ政府の敵対姿勢による影響を乗り越えられることに全幅の信頼を寄せると表明した。またトルコはアメリカの核合意離脱は地域の安定を揺るがし、新たな紛争を引き起こすと発表している。

評価

 

 今般のトランプ大統領の決定に対するアラブ側の報道として、例えば『シャルク・ル・アウサト紙』(サウジ資本)は、専門家の意見として、アメリカ政府は核合意離脱の決定によって損失を受ける銀行や企業に対する法的な影響に直面すると指摘している。また、アメリカ財務省高官の発言として、緊急計画が設置されたが、この影響に全面的に対処するには数カ月かかると伝えた。

 さらに同紙は、イラン国内では、ハーメネイー最高指導者と保守派の諸機関、ロウハーニー政権、革命防衛隊、市場によって立場が異なると言及している。ハーメネイー最高指導者について、核合意を破棄すると表明してきたが、現在、同氏がそうすることは難しいとの見方を示している。またイラン経済は、今般の決定に耐えることができず、その状況は悪化するとみている。他方、ロウハーニー政権については、アメリカが核合意を順守してこなかったと強調しつつ、核合意に残り続け、ヨーロッパが合意を保証することに焦点を当てながら、市場を安定化させる方針だろうと予想している。革命防衛隊については、その経済活動は西側諸国との関係がないため、新たに合意することは革命防衛隊の利益にならず、弾道ミサイルの実験やイスラエルに対する軍事攻撃を行う可能性があると予想している。

(西舘研究員)

◎本「かわら版」の許可なき複製、転送はご遠慮ください。引用の際は出典を明示して下さい。
◎各種情報、お問い合わせは中東調査会 HP をご覧下さい。URL:https://www.meij.or.jp/

| |


PAGE
TOP