中東かわら版

№66 イスラエル:極右活動家の取り締まりを強化か

 8月2日、イスラエル治安閣議は、極右活動家への取締を強化する決定を行なった。これは7月31日に西岸北部ナブルス近郊の村ドゥマで、極右の入植者と目されるグループがパレスチナ人の民家に放火し、1歳半の幼児が死亡、その家族が重態になった事件に対応したもの。規制強化により、イスラエル軍がパレスチナ人に対して多用している「行政拘禁」(容疑なしで半年間身柄を拘禁できる制度。英国が委任統治時代に導入し、その後、ヨルダン、イスラエル軍が継続して使用している)をユダヤ人極右活動家に対しても適用できるようになった。西岸における極右活動家らによるパレスチナ人への過激な行動(通称「プライス・タグ」:嫌がらせ、暴力行使、家屋の破損、農地破壊など)は従来から頻繁に発生しているが、イスラエル軍・政府は、あまり厳格に対応をしてこなかった。しかし、今回の事件で幼児が焼死したことは、イスラエルの基準でも行きすぎた暴力と見なされた。ネタニヤフ首相は、放火事件を非難し、遺族に謝罪している。

 イスラエルの極右の暴力行為は西岸だけでなく、イスラエル国内でも起きている。6月18日には、北部ガリラヤ湖畔にある「パンと魚の奇跡の教会」が放火される事件が発生していた。7月中旬、イスラエル警察は容疑者2名を逮捕していたが、8月3日には、極右活動の指導者メイル・エッティンガーを同事件との関連で逮捕している。エッティンガーは、米国生まれの極右活動家である故メイル・カハネの孫にあたると報道されている。

 7月半ば、ネタニヤフ首相は、西岸地区の入植地での新規の住宅建設を停止し、現在存在する入植地を維持することに政策の重点を移したと報道された。その結果、西岸の入植者らがネタニヤフ首相に反発し、入植活動を支持する極右政党「ユダヤの家」との軋轢も増加していた。

 

 評価

 極右入植者や極右活動家による暴力行為や示威行動は、日常的に発生しており、西岸のパレスチナ人とイスラエル軍・警察の対立激化の大きな要因になっている。2014年4月、米国務省は、2013年版グローバル・テロ報告書で、極右活動家らによる暴力行為(「プライス・タグ」)をテロ行為と分類している。同報告書では、2013年の発生件数は399回。イスラエル政府は、同報告書が発表された際には、取締強化の姿勢を見せたが、実際には何もしていないに近い状況だった。今回の規制強化決定も、現場で実際に履行されるかどうかは未定である。

(中島主席研究員)

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