中東かわら版

№134 パレスチナ:第7回ファタハ総会の開催

 西岸のラーマッラーで11月29日から開催されていた第7回ファタハ総会は、12月4日に中央委員18人と革命評議会委員80人を選出して終了した。今回のファタハ総会には1322人が参加した。前回2009年の総会参加者数は2355人だった。総会は、初日(29日)にアッバース現議長の議長再任を決定した。翌30日、アッバース議長は、2時間半の演説を行い、米国のトランプ次期大統領に公平な解決策を示すよう要請したほか、内政では、ハマースに対して暫定的な連立政権の樹立を呼びかけている。総会は、12月4日、中央委員会委員18人、中央委員会に次ぐ意思決定機関である革命評議会委員80人を選出した。中央委員会メンバーについては、アッバース議長が指名する形で数名を追加任命する予定である。選出された中央委員18人は、現職12人、新人は6人だった。第1位で当選したのは、現在イスラエルの刑務所に服役中のマルワーン・バルグーティ、第2位は元治安担当長官でパレスチナ・サッカー協会会長のジブリール・ラジューブだった。

 パレスチナ及び海外のメディアは、今回のファタハ総会では何ら新味のある決定はなく、中央委員の大部分がアッバース支持者で固められたと報道している。会議では大きな混乱はなかったが、予想外の動きや大きな路線の変更などもなかった。尚ファタハ総会は、アッバース議長になって今回が2009年に続いて2回目になる。ファタハ総会は、5年ごとに開催する決まりであるが、開催年は1964年、1968年、1971年、1980年、1988年、2009年で規定通りには開催されていない。

評価

 ファタハ中央委員会が総会開催を決定したのは11月1日で、開催までの時間は1カ月を切っていた。総会開催について内外のメディアは、アッバース大統領が、政敵でファタハを追放されたガザの実力者ムハンマド・ダハラーンのファタハ復帰を阻止することが目的であると報道していた。総会終了後のメディアの分析も、アッバース大統領はダハラーン支持者を追放することに成功したとの論調が多い。アッバース大統領は、ファタハ及びパレスチナ自治政府内での自己の政治的足場を固めることに成功したとしても、パレスチナ自治政府の先行きの展望が開けたわけではない。パレスチナのあるメディアは、西岸のパレスチナ人たちは、ファタハ総会開催にまったく関心を持っていないと報道している。

 ファタハは、7年ぶりに内部選挙を実施した。他方、ガザを統治するハマースは現在シューラー評議会の選挙を内々に実施しており、12月中に結果が出ると報道されている。またハマース政治局の局長選挙が年内に行なわれる予定だと報道されている。ミシュアル現政治局長は再選のための立候補をせず、ガザのハニーヤ元「首相」が次期政治局長に就任するだろうといわれている。ハニーヤはすでに9月はじめにガザを出て、現在はカタルに滞在しているようだ。

 パレスチナ内政の最大の問題は、西岸とガザの分裂である。同分裂を解消するための最良の手段は国政選挙(大統領・評議会)の実施である。ファタハとハマースがともに内部選挙を順調に済ませれば、国民和解の進展と国政選挙実施への展望が、今よりは開けるかもしれない。

(中島主席研究員 中島 勇)

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