中東かわら版

№132 イスラーム過激派:ロヒンギャ問題に対する関心

 2016年12月4日、イスラーム協力議機構(OIC)は事務局長名でミャンマーでのロヒンギャの人々に対する暴力を停止するよう呼びかけた。この問題については、イスラーム過激派諸派が攻撃されるムスリムの例としてあげることも多く、イスラーム過激派の関心事項や今後の活動を考える場合、看過できない点もある。最近イスラーム過激派がこの問題やビルマ/ミャンマーについて触れた例は少なくとも以下の7件がある。

評価

 上記の言及のうち、アル=カーイダや「イスラーム国」の作品群は、世界各地でムスリムが異教徒の攻撃にさらされたり、異教徒と戦っていたりする地域を単純に列挙したものである。一方、ターリバーンは、ミャンマーの統治者や問題解決に役立たない国際機関を非難し、世界のムスリムに支援を呼びかける声明を発表している。もっとも、現時点ではアル=カーイダや「イスラーム国」がロヒンギャ問題に特化した扇動や脅迫を行う兆候は見られないし、ターリバーンがアフガンの領域外で自ら攻撃を起こす可能性も低いと思われる。

 しかし、より重要なのは、イスラーム過激派の広報活動の中ではこの問題が「異教徒によるムスリム迫害」の例として位置づけられていると思われることである。より具体的には、仏教徒がムスリムを迫害していると認識されていることであろう。また、国際機関などがロヒンギャ問題解決のために具体的な措置をとらない状況が続けば、「異教徒によるムスリム迫害」というイスラーム過激派の世界観を強固にし、イスラーム過激派による攻撃の危険性を上昇させたり、彼らの扇動の説得力を高めたりする問題に発展しかねない。

(イスラーム過激派モニター班)

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