中東かわら版

№129 クウェイト:第17回国民議会議員選挙の実施

 11月26日、第17回国民議会議員選挙が実施された。選挙の概要は以下のとおり。

  • 立候補者数:455人
  • 最終候補者数:287人(128人が事前に辞退、40人が審査の結果出馬を認められず)
  • 議席数:50議席
  • 投票率:60~70%(各種報道機関による推計値)

 『Kuwait Times』によると、過去4年間選挙をボイコットしていたイスラミスト、ナショナリスト、リベラルの反政府派が今回の選挙に参加し、少なくとも15議席を獲得、また、これらの勢力と同盟関係にある勢力が7から10議席を獲得した。ムスリム同胞団系のイスラーム憲法運動(ICM)は6議席、サラフィー勢力は5議席を獲得したと見られている。

 他方、現職の議員は42人中22人が落選し、再選を果たしたのは20人のみであった。落選者のなかには、ウマイル公共事業相(元石油相)、サーニウ司法相兼ワクフ・イスラーム相も含まれていた。このほか、シーア派勢力が9から6に議席を減らし、通常であれば15-18議席を獲得するベドウィンの大部族勢力(アワージム、ムタイル、アジュマーン)は7議席にとどまった。また、親政府系のサラフィー勢力は前の議会で6-7議席を保持していたものの、今回の選挙で全ての議席を失った。

評価

 大方の報道において反政府派の躍進が伝えられているものの、その議席数については報道により数字が異なる。これは、クウェイトでは政党の結成が禁じられており、緩やかな政治的連帯を意味する政治団体の結成しか認められていないことに加え、各勢力が親政府勢力となるか反政府勢力となるかはそのときの政治情勢や政策課題次第で変化するためである。事実、親政府勢力が多数派を占める前の議会においてですら、政府による燃料価格の値上げを巡って政府・議会間の対立が発生し、今回の解散総選挙につながっている(詳細は「クウェイト:燃料価格の値上がりを巡り議会が解散」『中東かわら版』No.108(2016年10月17日)

 内閣は首長の任命によって組閣されるクウェイトにおいて、議会選挙は政権交代のような意味合いを持たないものの、議会は閣僚の喚問や不信任決議などで強い権限を持っている。今回反政府派が躍進した背景には、原油価格が下落するなか緊縮財政を採ろうとする政府に対する国民の不満があった。こうした国民の声を背景に、反政府派が政府との対決を選べば、かつてのような「決められない」政治が再度クウェイトで繰り広げられることになろう。あるいは、両者が妥協点を見つけることができれば、安定的な政治運営が行われる可能性もある。

(研究員 村上 拓哉)

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