中東かわら版

№92 イスラエル:ネタニヤフ首相のオバマ大統領との会談と国連総会演説

   9月21日、国連総会に出席するためニューヨークを訪問しているオバマ大統領とネタニヤフ首相は、オバマ大統領の宿舎のホテルで会談した。会談は私的なものとされ、約1時間行なわれた。会談後の報道によれば、オバマ大統領は西岸での入植地建設に懸念を表明したが、ネタニヤフ首相は、入植地は中東和平交渉の核心問題ではなく、パレスチナ側が学校教育の中でイスラエル人に対する憎しみを植え付けていることが問題だと反論した模様である。なおネタニヤフ首相は、会談の中で9月14日に署名された米国のイスラエルに対する軍事支援に謝意を表明した。両者の会談は、通算17回目とされ、今回が最後と見られている。

 ネタニヤフ首相は、翌22日、国連総会の一般討論演説を行なった。同首相は約40分間の演説を行い、国連のイスラエルに対する偏見を批判し、今後、国連のそうした見方は変わるだろうと楽観的な見通しを表明した。中東和平問題については、問題の核心は入植地ではなく、パレスチナ側がイスラエルをユダヤ国家として承認しないことであるとの主張を繰り返した。また中東諸国との関係について、域内諸国の多くがイスラエルを敵ではなく、同盟国と見なすようになった述べた。

 

評価

 オバマ大統領は、イスラエル政府との間で意見の対立はあるとしても、総額380億ドルの軍事支援を成立させたことで、イスラエル国家の安全保障確立については全面的に支援する大統領であるとの実績を残した。それに加えて、オバマ大統領は中東和平の解決策として2国家構想が残るよう何らかの成果をあげたいと考えているとのメディアの見方は依然強い。オバマ大統領が動くなら11月の大統領選挙後になると予想されている。オバマ大統領とネタニヤフ首相の確執はオバマ大統領の任期が切れるまで続く可能性が高い。

 ネタニヤフ首相の演説について、『エルサレム・ポスト』紙(22日)は、全体的に楽観的であるが、それを可能にする具体的な方法が提示されていないと分析した。首相演説の内容ではなく、演説の際、会場に空席が多かったことを取り上げ、『ハアレツ』紙は、聴衆はイスラエルとパレスチナの指導者の話に関心を失っているとし、『NYT』紙は、他の重要な問題のため中東和平問題は国連総会の議論で脇に置かれたと論評した。

(中島主席研究員 中島 勇)

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