中東かわら版

№55 イスラーム過激派:バングラデシュでの襲撃事件

 2016年7月2日早朝(日本時間)バングラデシュでレストランが襲撃され多数の死傷者が出た。襲撃犯がたてこもり人質をとったとされていたが、治安部隊が突入し、人質らを解放した模様である。事件については、インターネット上で「イスラーム国」の自称通信社「アアマーク」が情報を発信したり、「インド亜大陸のアル=カーイダ」傘下の「アンサール・イスラーム」のものとされる書き込みがみつかったりするなど情報が錯綜している。なお、本稿執筆時点でいかなる団体からも「犯行声明」とみなすべきものは発表されていない。

画像1:「アアマーク」の第一報とされる書き込み

 

画像2:「アアマーク」が事件の犠牲者数について発信した書き込み

画像3:「アンサール・イスラーム」のものとされる書き込み

 

評価

 その後、「アアマーク」は事件現場の模様と称して射殺された犠牲者と見られる写真なども発表、「実況中継」的な発信を行った。しかし、一連の発信は、「アアマーク」が事件についての情報を発信したという以上の受け止めができない内容である。というのも、「イスラーム国」は「犯行声明」を発表したり広報キャンペーンを行ったりする発信元を他に持っており、「アアマーク」に「犯行声明」に類する意思表示をする権限があるとは考えにくいからである。実際、バングラデシュで発生した事件について「イスラーム国」が「犯行声明」を発表した場合は、下の画像のような体裁をとっており、「アアマーク」の発信だけで「イスラーム国」の情報発信として完結するわけではない。

 このような状況下では、「イスラーム国」の狙いや意図について外部の観察者が忖度しても「イスラーム国」のプロパガンダに手を貸すだけの結果に終わりかねない。仮に今般の事件が「イスラーム国」の作戦ならば、同派自身が寄り詳細な情報発信をするのを待つべきだろう。

 

画像4:2015年10月に「イスラーム国」がバングラデシュで日本人を殺害したと主張した際に発表した声明

(イスラーム過激派モニター班)

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