中東かわら版

№40 イスラエル・パレスチナ:フランスが中東和平に関する閣僚級会合を開催

 6月3日、仏国はパリで中東和平に関する閣僚級会合を開催した。同会合には、中東和平4者協議メンバー(米国、ロシア、EU、国連)、安保理常任理事国、欧州、アラブ諸国などから29の国と国際機関が参加した。閣僚級会合は、共同コミュニケを採択して約3時間で終了した。今回の協議には、イスラエルとパレスチナは招待されていない。共同コミュニケでは、具体的なステップについて何もふれられていないが、中東和平問題の解決には、交渉による2国家創設しかないとの認識や中東和平の置かれた現状(暴力連鎖や入植地建設の継続)に対する懸念などを参加国・組織が共有することが改めて表明された。仏国は、秋あるいは年末までに開催する次回会合にはイスラエルとパレスチナを招待する意向だと報道されている。イスラエルは今回の閣僚級会合開催に反対し、パレスチナは賛成を表明していた。

評価

 今回パリで開催された中東和平に関する閣僚級会合は、3時間で終了したと報道されている。しかし、たとえセレモニー的会合であっても、当事者(イスラエルとパレスチナ)抜きで中東和平に関する国際会議が開催されたことの意味は重い。今回の閣僚級会合の開催は、今後行なわれる中東和平交渉が、当事者間の交渉を柱とするこれまでの方式から、国際社会がより積極的に関与する方式に変わる可能性を示唆している。米国はイスラエルとパレスチナの直接交渉による解決を模索し、国連の介入を排除してきた。しかしオバマ大統領は、自分の任期中にイスラエルとパレスチナの交渉は進展しないと判断した後、中東和平問題をめぐる状況の悪化を懸念し、同問題を解決するための大きな枠組(2国家構想)だけは政治的遺産として残したいと考えていると報道されている。そのため米国は、伝統的な国連排除の政策を変更し、安保理決議によって、今後の交渉の大枠を規定することを選択肢の一つとして検討しているといわれている。ケリー国務長官がパリの会合に参加したことが米国の中東和平政策の変更を示唆するのであれば、秋あるいは年末までに国連安保理で中東和平問題に関する新たな決議案が採択される可能性が高くなったことになる。またイスラエル政府が、強く反対したにも関わらず、米国を含む主要国がパリでの会合に参加したことは、ネタニヤフ政権の国際的な孤立の深まりを示している。

(中島主席研究員 中島 勇)

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