中東かわら版

№9 アフガニスタン:ターリバーンが春季攻勢を宣言

 2016年4月12日、ターリバーンは声明を発表し、12日より今年の春季攻勢「ウマル作戦」を開始すると発表した。発表によると、攻勢は「敵の制圧下に残っている地域を一掃する」ため、「敵とその配下の民兵の士気を低下させる消耗戦に引き込むため、全国で殉教作戦、戦術攻撃、暗殺などあらゆる手段を用いる」ためのものである。また、攻勢と並行し、敵方に属する者たちをムジャーヒドゥーンの側に合流させる働きかけを行うとも表明している。なお、ターリバーンは例年4月~5月に春季攻勢を行っており、2014年5月8日には「ハイバル」攻勢、2015年4月22日には「アズム」攻勢を開始すると宣言している。

 

評価

 ターリバーンが春季攻勢を宣言することは例年通りのことである。また、12日が攻勢開始の日と定められたのは、第二代カリフのウスマーンの統治時代にムスリム勢力が「ヤルムークの戦い」で勝利を収めたイスラーム暦のラジャブ月5日に合わせたためである。

 一方、攻勢の攻撃対象については、2014年には「この攻勢で標的となるのは、第一に外国の占領者とそのスパイ、彼らと契約を結ぶ軍事・民間業者、彼らと共に働く者、通訳、行政職員、兵站要員である。第二の標的は、カブールの傀儡政権のあらゆる高官、政府と議会構成員、治安職員、国防省と内務省の外国人支援担当将校、司法省の召喚担当職員、最高裁判事、国家治安局のスパイ共である。・・・標的となる場所は、外国占領軍の軍事拠点、外交使節、車列、占領者を助ける傀儡どもの軍事施設、国防省・内務省・ムハーバラー(情報機関)ト、傭兵民兵の拠点と車列である。」、2015年には「この攻勢の第一の標的は、十字軍占領者、特に彼らが常駐する基地、諜報拠点、外交拠点である。次は傀儡政権の職員と、彼らの軍事拠点、内務省・国防省職員、ムハーバラート、その他の要員である。」と表明しているのに対し、今般の発表ではこのような具体的な例示はなかった。こうした例に対し、今般の声明では、攻撃対象や目標となる場所に関する表現が軍事目標に限られているような印象を受ける。また、敵方の者をムジャーヒドゥーンの側につけるための働きかけを行うとの方針は、目新しいものと思われる。

 春季攻勢の開始宣言により、ターリバーンとアフガン政府側との和平協議は一時的に停滞することになろう。また、声明に具体的な記述や脅迫がないことは、民間人や民間機関、外交団のようなものに対する脅威が皆無であることを意味しないため、当分ターリバーンの作戦行動の活発化には注意が必要だろう。

(イスラーム過激派モニター班)

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