中東かわら版

№168 イスラーム過激派:「イスラーム国」の求人募集

 2月13日付の『ハヤート』紙は、「イスラーム国」による「求人募集」に関して以下の通り報じた。

  • シリア東部ダイル・ザウル県の「イスラーム国」は現在、空きのある職種の求人募集をかける広報活動を行っている。
  • 同県アブーカマール市では医者、看護師、電気技師、地方自治体職員への就職の呼びかけを「イスラーム国」所管の雇用局が行っている。
  • 応募の条件は、年齢15歳から50歳であること、「イスラーム国」戦闘員からの推薦があること、自身の専門分野に関する何らかの証明書を有していることである。

評価

 今回の報道は「イスラーム国」が占拠する一部の地域を取り扱っているため、全ての占拠地域の実態を反映しているわけではない。だが「イスラーム国」がしばしば広報映像の中で標榜している国籍や民族、人種を問わず、ムスリムであれば誰でも受け入れるという広報と実態の間にはかなりの乖離があることを指摘できる。

 「イスラーム国」が専門性の高い人材を必要としており、なおかつ「イスラーム国」戦闘員からの推薦が必要とされていることから、同組織が外部に開く門戸はそれほど広くないだろう。応募の際の年齢制限の枠は、この門戸をさらに狭めている。なお、この年齢制限は、かつて女性戦闘員の求人(18歳から25歳の未婚女性)でも見られた(詳しくは2015年2月12日付『中東かわら版』No.245をご参照ください)。ここから判断するに、「イスラーム国」が必要とする「国民」は、戦闘や労働能力の面である程度成育している主体であり、高い生産性を求めることの難しい子どもや高齢者などを「国民」として迎え入れることには積極的な誘因が働いていないと考えられる。

 こうした「国民」の峻別からは、「イスラーム国」が依然として他者に依存している様子が伺える。なお、上記の応募条件を満たしていないにも関わらず、「イスラーム国」への移住を希望する者に至っては、自爆攻撃や前線部隊で消耗品扱いされたり、衣食住の不十分な現実が待ち受けており、日々の戦闘や広報の材料として活躍する機会しか与えられないことに留意すべきであろう。

(イスラーム過激派モニター班)

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