中東かわら版

№165 イスラーム過激派:「イスラーム国」がリビアで拡大か

 2月5日付の『AFP』など欧米の各種報道機関は、ここ数ヶ月間の「イスラーム国」の戦闘員の数や流入先に関して米国防総省の情報筋等の情報筋の言として以下の内容を報じた。

  • イラク・シリアの「イスラーム国」戦闘員の数が減少する一方、リビアのそれが増加している。
  • リビア国内にいるジハード主義者の数は、2000から3000人と見積もられていたが、現在は最低5000人以上(6500人との見方もある)となった。シリア・イラクの「イスラーム国」戦闘員は19000人から25000人の間とされており、2014年に推定された20000人から33000人を下回った。
  • シリアとイラクでの戦闘員減少の原因として、有志連合やロシアの空爆、シリアとイラクからの逃亡、戦闘員の教化措置や勧誘の失敗がある。
  • 外国人戦闘員のイラクとシリアへの流入が困難になったことを受け、シリア入りできずにトルコからリビアに向かう戦闘員がいる一方、シリアからリビアへと向かう戦闘員の動きもある。

 

評価

 イラクとシリアにおいて「イスラーム国」戦闘員が減少している背景には、有志連合やロシアによる空爆の効果も一定程度あるだろうが、その一方でシリアとイラクからの逃亡やトルコからシリアへの戦闘員流入の塞き止めが大きな要因になっていると考えられる。ここから、国際的な課題として認識されているヒト・モノ・カネのシリアやイラクへの流入阻止がある程度成功していると評価できなくもない。

 だが、シリアからリビアに向かう戦闘員の動きに鑑みるに、一概にこうした評価はできない。このルートはトルコを主な経由地とする。すなわち、トルコが依然として戦闘員の経由地として機能していることを意味するのである。

 むろん、トルコをシリアからの出口として用いる主体の中には当然、シリアとイラクから避難してくる非戦闘員がいるし、その中に「イスラーム国」支配地域からの逃亡者等が紛れていると想起できる。シリアからの出口としてトルコが機能していることは、これらの主体を扱いかねている同国の姿を反映しているといえなくもないが、いずれにせよ、それこそがリビアへと「イスラーム国」戦闘員を流入させる明白な原因であるし、シリアとイラクにおける資源の移動がいまだ完全に制御されていない実態を物語っている。

(イスラーム過激派モニター班)

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