中東かわら版

№96 バハレーン:内閣改造および行政改革

 9月30日、ハマド国王は内閣改造を行った。労働省と社会開発省、情報省と評議院・代議院担当省が統合したことにより、閣僚数は24から22に減少した。新たに入閣した者はいない。

 また、10月7日、行政改革が発表された。職業訓練最高評議会の権限を労働基金(Tamkeen)に移動、電子政府機構と中央情報機構(CIO)の統合、若者・スポーツ機構の権限を若者・スポーツ省に移動など、10の政府機構を統廃合するとともに、政府支出見直しのため新たに6つの作業部会を設立した。各作業部会は、政府施設維持費(公共事業・地方自治・都市計画相が主導。以下同)、旅費(運輸・通信相)、施設賃貸費(商工・観光相)、広告・出版・購読・文房具費(情報・評議院・代議院担当相)、IT費(電子政府機構長官)、医療費(保健省次官)の見直しを進める。なお、これらの行政改革により、政府職員の解雇が行われる予定はない。

 

首相

ハリーファ・サルマーン・アール=ハリーファ

王族

第一副首相

サルマーン・ハマド・イーサー・アール=ハリーファ

王族(皇太子)、副最高司令官

副首相

ムハンマド・ムバーラク・アール=ハリーファ

王族

副首相

アリー・ハリーファ・アール=ハリーファ

王族

副首相

ジャワード・サーリム・アリード

 

副首相

ハーリド・アブドゥッラー・アール=ハリーファ

王族

内閣担当相【改称】

ムハンマド・イブラーヒーム・ムタッワウ

前フォローアップ担当相

内相

ラーシド・アブドゥッラー・アール=ハリーファ

王族、中将

外相

ハーリド・アフマド・ムハンマド・アール=ハリーファ

王族

財相

アフマド・ムハンマド・アール=ハリーファ

王族

教育相

マージド・アリー・ヌアイミー

博士

エネルギー相

アブドゥルフサイン・アリー・ミールザー

博士

司法・イスラーム・寄進相

ハーリド・アリー・アブドゥッラー・アール=ハリーファ

王族

公共事業・地方自治・都市計画相

イサーム・アブドゥッラー・ハラフ

 

労働・社会開発相【統合】

ジャミール・ムハンマド・アリー・フマイダーン

前労働相

運輸・通信相

カマール・アフマド・ムハンマド

 

住宅相

バーシム・ヤアクーブ・ハマル

 

国防担当相

ユースフ・アフマド・フサイン・ジャラーフマ

中将

保健相

ファーイカ・サイード・サーリフ

女性、前社会開発相

商工・観光相【改称】

ザーイド・ラーシド・ザヤーニー

前商工相

情報・評議院・代議院担当相【統合】

イーサー・アブドゥルラフマーン・ハマーディー

前情報相

若者・スポーツ相

ヒシャーム・ムハンマド・ジャウダル

 

 

・退任

サーディク・アブドゥルカリーム・シハービー保健相
ガーニム・ファドル・ブーアイナイン評議院・代議院担当相

 

 

評価

 一連の内閣改造および行政改革の目的は、石油価格が下落するなか、深刻な財政危機に直面するバハレーン政府による、行政機構の縮小措置である。前回の内閣改造では、省庁再編により3人分の閣僚ポストが減らされた(2014年12月の内閣改造については「バハレーン:内閣改造と上院議員の任命」『中東かわら版』No.202(2014年12月9日)を参照)。今回も、9月17日にハマド国王からハリーファ首相に対して「小さな政府」を組閣するよう指示が出されており、閣僚の人数を減らすことは規定路線となっていた。政府機構の統廃合、政府支出見直しのための作業部会の設置も、同様の主旨によるものである。

 もっとも、今次政策がバハレーン財政にとってどれだけの効果があるか、見通しは不透明である。通常であれば、財政危機に対する国民からの不満の回避策として政府職員の人員整理や給与の引き下げなどがとりうるが、国民の4割以上が公共部門で就労しているバハレーンにおいて、これらの措置は国民の政府に対する支持を失うことになりかねず、現実的な選択肢ではない。今回の行政改革においても政府職員のリストラは行わないことが明言されており、肥大化した行政機構の縮小には更なる時間を要するであろう。

(研究員 村上 拓哉)

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