中東かわら版

№74 イラン:在イラン英国大使館の再開

 8月23日、イランを訪問中のハモンド英外相は、ザリーフ外相とともに2011年に閉鎖された在イラン英国大使館の再開記念式典に出席した。英外相のイラン訪問は2003年以来。また、英国で開かれた在英イラン大使館の再開記念式典には、イランからはヤズディー副外相(行財政担当)、英国からはストロー元外相が出席した。

 ハモンド英外相は記念式典において、ロウハーニー大統領の選出後、両国の関係は徐々に改善していき、先月の歴史的な核合意がもう一つの画期的な出来事だった、戦略的に重要だが不安定な地域においてイランは重要な国家であり、今後もそうであろう、対話を継続することは難しい状況下にあっても必要不可欠なことであると強調した。また、同外相には、ハインズ国庫大臣(Exchequer Secretary to the Treasury)や、ロイヤル・ダッチ・シェルの幹部などビジネス代表団が同行し、将来の貿易の機会についてイラン側と協議した。 

 2011年に両国の大使館が閉鎖されたのは、対イラン制裁の強化に抗議するデモが暴徒化し、英国大使館および英国大使公邸を襲撃したことがきっかけであった。大使館が閉鎖されている間は、オマーンが英国におけるイランの利益代表部を、スウェーデンがイランにおける英国の利益代表部を担ってきた。

 

評価

 核合意の成立後、欧州諸国とイランは急速に接近している。7月から8月にかけて、ドイツの副首相兼経済・エネルギー相、フランスの外相、イタリアの外相が、経済代表団とともに相次いでイランを訪問し、今後のイランとの外交・経済関係について協議している。イランの核問題は、米議会での議論やイランのIAEAへの査察協力など、今後の合意の履行を不安視させる要因もあるが、欧州諸国は制裁解除を見越して早くも動き出した形だ。

 今回のハモンド英外相訪問も、同様の「イラン詣」の一環であり、過去の関係を清算し、新たな協力関係を模索するものであろう。他方、シリア・レバノン情勢やイエメン情勢を巡って、欧州諸国とイランとの外交立場は大きく異なり、その点はBBCとのインタビューにおいてハモンド外相自身も触れていたことである。しかしながら、イランとの経済関係が深まることによって、このような外交問題において欧州側がイランへの強硬な対応を回避することもありえよう。

(研究員 村上 拓哉)

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