中東かわら版

№49 チュニジア:「イスラーム国」、スーサ襲撃事件の声明を配信

 6月25日、チュニジア北部スーサの地中海に面するホテルにて、男が銃を乱射し、外国人39名が死亡する事件が発生した。同日、「イスラーム国」が発行したと思われる声明がネット上に出回り、アブー・ヤフヤー・カイルワーニーなる人物が「姦通者、堕落者、異教徒が横たわる悪の巣窟を標的にし、十字軍と連合を組む国家の国籍を持つ者40人近くを殺害した」旨発表された。なお、チュニジア当局の発表によれば、同人の本名はサイフッディーン・リズキーとされ、出身地はガアーフール(チュニジア北西部シリアナ県の都市)だという。

評価

 今回の事件で、チュニジアで観光地が標的となったのは2回目となる。今年の3月にはバルドー博物館事件(2015年3月19日、20日付『中東かわら版』No.273274を参照)が発生して、邦人2名が犠牲となったことは記憶に新しい。この事件では、「イスラーム国」かアンサール・シャリーアのどちらが主犯かをめぐり情報が錯綜したが、今回は「イスラーム国」が犯行声明を発表した。

 事件から2日が経過し、犯行当時の様子や実行犯の出自、犯行動機が少しずつ明らかにされている。実行犯は1992年生まれ。成績優秀、自制心が強く、授業に遅刻しない生徒といわれている。また、もともと過激な思想を持ち合わせていなかったが、半年ほど前から過激派と接触していたとされている。そのため、当局の指名手配者リストや監視の対象に入っていなかった。単独での犯行か組織による犯行なのかは不明だが、チュニジアのラジオ局によれば、同氏は犯行前に何者かと携帯で通話をしており、携帯を海に投げた後、犯行に向かったとの情報もある。

一方、この事件を受けて、チュニジアのハビーブ・シード首相は、観光地に治安部隊を派遣したほか、向こう一週間の間、暴力の扇動に利用されうる国家管理下にない80カ所のモスクを閉鎖すること、予備軍を観光地や遺跡に派兵することを発表した。

 現在、チュニジアでは民主化が進められているが、イスラーム過激派の活動は依然として活発である。今後、「イスラーム国」であれアンサール・シャリーアであれ、チュニジアの観光業に悪影響を与え、民主化を頓挫させるために、今回のように観光客を標的とした攻撃を起こす可能性は否定できない。

(イスラーム過激派モニター班)

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