中東かわら版

№34 トルコ:大国民議会議員選挙(総選挙)の実施

 6月7日(日)午前8時より、トルコ全土で大国民議会議員(国会議員)選挙が実施された。

    現地時間の7日(日)の午後5時に締め切られた投票は即日開票され、報道機関によって多少のばらつきはあるが、8日現在の各政党ごとの得票率は以下の通りである。

 

投票者数:約5,370万人

投票率:約85%

開票率:99%

総議席数:550議席

【政党別得票率(想定獲得議席数)】

・公正発展党(AKP・親イスラーム・中道右派政党) 40.8%(254~257議席)

・共和人民党(CHP・中道左派政党)   25.1%(132議席)

・民族主義者行動党(MHP・極右政党)  16.4%(81~82議席)

・人民の民主主義党(HDP・クルド系左派政党) 12.9%(80~82議席)

・その他 4.8%

 

評価

 今回の総選挙で、政権与党である公正発展党(AKP)は、全体の3/5(330議席)以上の獲得を最大目標としていた。これは、大統領権限の強化を目指し憲法改正を行うために必要な国民投票の実施が単独で可能となる議席数である。だが、蓋をあけてみれば、3/5どころか過半数にも満たず、前回の総選挙から大幅に議席を減らす結果となった。大きな要因はエルドアン大統領を中心とした政権運営が非常に強権的になってきたこと、「イスラーム国」に関連し、シリアからの難民流入がトルコ国内の治安悪化に繋がっていること等が挙げられる。同党は2002年に政権獲得以降、議席数が過半数を割れたことはなかったので、40%を超えたとは言え、これまでにない厳しい評価だったと言える。また、注目を集めていたクルド系左派政党のHDPは13%近い得票率を獲得し、10%という厳しい足きり条項があるトルコで、政党として初めて議席を獲得した。極右政党のMHPも2011年時より大幅に得票を伸ばしている。憲法の規定に則り45日以内に組閣を行う必要があるが、単独過半数が獲得できなかったAKPは他の党と連立を組むか、または協力体制を構築しなければならない。しかしながら、いずれの野党とも相容れない部分があり、現時点においてどのような対応をとるかは不透明である。

(研究員 金子 真夕)

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