中東かわら版

№28 オマーン・イラン:海上国境の画定

 

 5月26日、オマーン訪問中のイランのザリーフ外相は、ハムード内相とオマーン・イラン間の海上国境の画定に関する協定に署名した。オマーンとイランはオマーン海を挟んで対岸に位置しており、両国がもっとも接近するホルムズ海峡においては、領海とされる両国の基線から12海里の領域に重なる部分があった。1974年には両国間の大陸棚の境界について定めた合意文書が締結されていたが、厳密には二国間の海上国境は画定しておらず、どこまでがそれぞれの領海となるかについては議論の余地が残されていた。

 

評価

 オマーンは他の湾岸アラブ諸国と異なり、イランのイスラーム革命以前・以後のいずれもイランの友好国であった。海上国境に関しても、今日まで画定には至らなかったが、両国の間で領域を巡る紛争が過熱化した事例はない。1974年の大陸棚の境界は事実上の海上国境として見なされており、ホルムズ海峡における国際航路の分離通航帯が「オマーン側」に設定されたり、二国間で海上合同救難訓練が実施されたりするなど、領海の範囲について係争の対象とはなってこなかった。また、ホルムズ海峡の外側に位置するオマーン海では両国の領海が重なることはないものの、排他的経済水域(EEZ)は重なる部分があることから、今次協定ではその点についても何らかの合意がなされたと見られよう。

 今次タイミングで両国の海上国境が画定したことは、近年のオマーン・イラン関係の蜜月ぶりを象徴するものと言えよう。オマーンはGCCの一員ではあるが、イラン・米国間の核交渉進展に向けて会合をセッティングしたり、イエメンへの空爆に参加しなかったりと、独自の外交政策を展開している。しかしながら、これはオマーンが伝統的な中立的立場を維持しようとしているものであり、「サウジ離れ」あるいは「イラン寄り」になっているという見方は早計だろう。

(研究員 村上 拓哉)

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