中東かわら版

№15 UAE:国際石油開発帝石がアブダビの陸上油田の権益5%を獲得

 4月27日、国際石油開発帝石(INPEX)は、アブダビ政府およびアブダビ国営石油会社(ADNOC)と、アブダビ陸上石油操業社(ADCO)鉱区の5%の権益獲得に関する契約文書に署名した。本契約は2015年1月1日からの40年間を契約期間とする。取得額は明らかにされていないが、11億ドル程度と見られている。ADCO鉱区はアブダビの複数の陸上油田から構成され、全体で日量160万バレルの原油が生産されている。2017年までに日量180万バレルまで生産量を引き上げる予定であり、INPEXは同鉱区における開発に参画することになる。

 

評価

 

 ADCO鉱区は、1970年代以来、BP(英)、トタル(仏)、ロイヤル・ダッチ・シェル(蘭)、エクソン・モービル(米)といった欧米の石油大手企業が9.5%ずつの権益を有していたものの、2014年1月に契約期限を迎えていた。欧米企業は契約の更新を希望していたものの、アブダビ側はアジア企業も含めて入札を実施することを決定し、2014年1月に各社の契約は失効、一時的にADNOCが全権益を取得していた。2015年1月には契約締結に至った最初の企業としてトタルが10%の権益を新たに獲得することで合意していた。今回のINPEXによる契約合意は、トタルに次ぐものである。

 今回の新たな契約締結は日本への石油の安定供給にとっても重要である。日本にとってUAEはサウジアラビアに次ぐ石油輸入先であるが、政治的・経済的に安定しているUAEは供給元として信頼できる相手であろう。また、石油の輸送にあたっては、2012年から稼動を開始したアブダビからフジャイラを結ぶ陸上パイプラインも使用される予定である。同パイプラインはペルシャ湾の外に位置するオマーン湾まで結ばれているため、ホルムズ海峡を迂回することが可能であり、地域情勢の影響を受けにくいという特徴を有している。安倍首相がINPEXの権益獲得について異例のコメントを発出しているように、日本にとっては官民一体となって進めてきた事業の一端の成果が出たことを意味している。

(研究員 村上 拓哉)

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