中東かわら版

№7 トルコ:6月7日総選挙に向けた候補者リストの提出

 6月7日にトルコ全土で実施予定の大国民議会議員(国会議員)選挙へ向け、4月7日、政権与党である公正発展党(AKP)、最大野党の共和人民党(CHP)、クルド系政党の人民の民主主義党(HDP)をはじめ各政党は、高等選挙委員会(YSK)にそれぞれの候補者リストを提出した。上記主要政党を含め、31の政党が今次選挙に参加する予定である。

 今回の総選挙は、憲法改正を行い、大統領権限の強化を図ろうとしているエルドアン大統領の目論見どおりとなるかどうかが最大の焦点で、AKP単独で憲法改正が可能な330議席獲得できるかに大きな注目が集まっている。エルドアン大統領は定数の7割以上となる400議席の獲得を目指すとして強気な発言を行っている。

 ・国会議員の定数:550議席

 ・国会議員の任期:4年

 ・選挙運動開始:3月10日

 ・各党から候補者リスト提出期限:4月7日

 ・候補者確定リスト公表:4月24日

 ・投票日:6月7日

(海外投票所は5月8日~31日、国境地域にある税関所は5月8日~6月7日)

評価

 

 今回、各政党が選出した候補者リストにはそれぞれの特色が現れている。AKPは、エルドアン大統領の強権的な手法にAKP所属の議員からも批判が出ており、エルドアン大統領に近い者、または大統領支持者を多く候補者に選定したと報じられている。

 CHPは、7日の記者会見で全550名の候補者のうち女性候補103名を選出し、主要都市であるアンカラ、イスタンブル、ブルサ、アダナ、イズミル、エスキシェヒルにおいて女性の候補者を割り当てたことを発表した。いずれも激戦区であることから、女性を擁立しクリーンなイメージでAKP候補者と戦うことを念頭においていると思われる。また、同党はジャーナリスト出身者も候補者として擁立している。

 クルド系政党で中道左派のHDPは共同党首のデミルタシュが存在感を増しており、エルドアン大統領の強権的な政治手法や汚職問題等に反発する国民が、HDP支持に回り、AKP候補者の票を奪うのではと言われている。

 トルコでは10%の足きり条項が存在するため、得票率が10%を超えないと議席を得られない。小党乱立を防ぐことを目的として定められた法律ではあるが、少数意見が反映されないとの批判がなされてきた。2011年に行われた総選挙では、この10%条項を回避するために、HDPの前身政党である平和民主党(BDP)は、政党としてではなく、候補者を全員無所属として選挙に臨んだ。今回初めての選挙となるHDPは、政党として選挙戦を戦うことから、この10%を超える得票率を得られるかにも注目したい。

(研究員 金子 真夕)

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