中東かわら版

№2 パレスチナ:国際刑事裁判所に正式加盟

 4月1日、「パレスチナ国」は国際刑事裁判所(ICC)の正式加盟国となった。オランダ・ハーグの国際司法裁判所で行なわれた式典(非公開)には、パレスチナ自治政府のマーリキ外相が出席した。「パレスチナ国」は、ICCの123番目のメンバー。パレスチナ側は、加盟した後はしばらく状況を見るとしており、西岸の入植地あるいは昨年のガザでの戦闘の際のイスラエル軍の攻撃などについて、急いで国際刑事裁判所に提訴することはない模様である。

 アッバース大統領は、2014年12月31日に国際刑事裁判所設立条約に署名し、2015年1月2日、同裁判所の加盟に必要な書類を国連事務局に提出した。1月3日、イスラエルはパレスチナ側がICCに加盟申請を行なったことに対する報復措置として、イスラエルがPAの代行として徴収しているPAの税金の送金を停止していた。3月27日、ネタニヤフ首相は、送金停止が西岸情勢を不安定化させるとのイスラエル軍及びシンベドの要請を受ける形で、停止していたPAへの税金送金を再開すると発表した。イスラエルが発表した送金再開が、これまで送金を停止していた分(2014年12月から3月分)だけを意味するのか、過去の分と4月以降の分を意味するのかははっきりしない。イスラエルは、保留した税金からPAがイスラエルに支払うべき電気・水道料金などを差し引いた額を送るとしている。しかしイスラエルとパレスチナの間でこの差し引き額が合意されておらず、実際の送金はまだ実施されていない。他方PAは、税金送金停止を理由に昨年12月から公務員の給与を4割カットしているが、3月分も給与カットを継続すると発表している。イスラエルのメディアは、パレスチナ側が国際刑事裁判所でイスラエルへの訴訟をしないこと、治安協力を継続することが送金再開の条件だと報道しているが、パレスチナ側は同報道を否定している。

評価

 パレスチナ側は、国際組織に正式加盟することで「パレスチナ国」の国際的な地位の向上をめざしてきた。国際刑事裁判所加盟は、一連の国際機関加盟キャンペーンの中で、パレスチナ側が最も重視したものであり、イスラエルが強く反発した加盟である。国際刑事裁判所に加盟したことで、中東和平交渉の現状が大きく変わることはないとしても、パレスチナ側はイスラエルに対する有力な法的対抗手段を入手したことになる。

(中島主席研究員 中島 勇)

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